書/王羲之: 作品目録 (2014, Jan. updated)

王羲之の真跡は世界中に1点もない。忠実な古いコピーも実に少ない。ここでは、いろいろな模本の紹介と評価をする。

日本国内所蔵分

3点ともたぶん正倉院から平安時代に流出したもの。紙の質がすべて同じ白紙であり、縦に無数の筋目が入っている特殊な紙である。これは奈良・平安初期・隋唐時代の高級な書写用の紙としてよく用いられた物である。弘仁12年(820) に155貫文で売られた書法20巻のうち第7巻48行が白紙であり、3点ともそれから切断されたものだろう。
正倉院の王羲之書法と唐宮廷の関係については ここ

台北故宮博物院


台北故宮博物院の他の(伝)王羲之書

欧米収蔵分

中華人民共和国内所蔵分

王羲之 周辺の墨跡

碑と拓本

王羲之 には同時代に自分が書いて彫らせた碑はない。ただ、唐代に王羲之 の字を集めて組み合わせてつくった碑はある。有名なところでは、西安碑林の集字聖教序 と同じく西安碑林の集王興福寺残碑。拓本だけ残っているものでは、宋拓集王羲之金剛経もある。集字聖教序が一番よいとされている。ただ、今の石面は痛みきっているので、古くて良い拓本/あるいはその複製をみたほうが良い。例えば、東京の三井文庫にはこの碑の優れた拓本が多く収蔵されている。

また、宋拓の名帖は北京故宮にかなり集中している。澄清堂帖の残本3種がすべてここ、大観帖もあるようだ。草書の手紙をおもに集めて、石に刻んだ「十七帖」は開封博物館にある馮銓本がおそらく一番すぐれているので, 是非見てみたいものだ。上海博物館にある呉寛本十七帖もいいが、ちょっと鈍い感じもする。日本にあるものでは、京都国立博物館の上野理一旧蔵本十七帖。これは破損した字をまずく修理したところがあり、それを除けばそうとういいようだ。台東区書道博物館所蔵の淳化閣帖夾雪本もなかなか素晴らしかった。特に8巻が良い。淳化閣帖では世界で1、2を争う拓本だろう。
石に彫った蘭亭序としては、定武本蘭亭序は宋代から有名ではあり、多数の複製や再版の拓本がある。しかし、ほとんど観るに耐えず、台北故宮博物院にある元・柯九思旧蔵「定武蘭亭真本」と東京国立博物館にある、断片七十字のみが、良いようだ。

近年 滅んだ分

所在不明・行方不明の分

Ref.

  1. 名古耶明, 新発見の王羲之, 「妹至帖」, 墨美251, 昭和50
  2. 張彦遠, 法書要録, 人民美術出版社, 1984
  3. 三希堂法帖釈文
  4. 表立雲, 袁生帖の発掘, [墨スペシャル20王羲之を学ぶ」
  5. Lothar Ledderose 米フツとその芸術 日本語訳1987, PrincetonUniversity  Press,1979
  6. 芸術新聞社:「墨スペシャル 王羲之」, 1990
  7. 西林昭一:「書の文化史 上」, 1991
  8. 中田勇次郎 編集 書道芸術第1巻:「王羲之王献之」 中央公論社
  9. 小松茂美 「秋萩帖」原本の出現 東京国立博物館紀要 第20号, 1984
  10. 孫承沢 庚子消夏記  北京 龍威閣
  11. 昭和蘭亭記念会,「 昭和蘭亭記念展図録」, 東京, 1973
  12. 西川寧,「新出の行穣帖」, 書品142号, 東京, 1963  
  13. 翰墨軒, 王羲之 萬歳通天進帖, 香港, 1997  
  14. 藝苑綴英44期(1993)天津芸術博物館特輯
  15. 徐邦達, 王羲之蘭亭序モ臨前後七種合考察, 書譜, 第8巻第3期, 1982
  16. 楊仁がい, 国寶[水冗]浮録, 上海人民美術出版社. 1986
  17. 書論研究会 「書論」 第3号, 特集王羲之と蘭亭序, 1973
  18. 故宮法書第1輯 晋王羲之墨跡  民国51年。
  19. 故宮法書選第輯 唐人臨模黄庭経  文物出版社。
  20. 大英博物館 敦煌楼蘭古文書展, 1983 
  21. 太田 晶二郎,王羲之「孔時中帖」について--特に其の前に接してゐた帖,東京大学史料編纂所報 通号 3 1968ページ 12〜22,1968


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 99年12月】