台北故宮博物院 2007Feb.
台北故宮博物院 2007/2/5-9
5年ぶりだ。日本の知人先輩と多く会うことができた。ロンドン大学の中国絵画の先生に名刺を渡す。
朱三松の竹刻西廂記筆筒と 竹刻蓮葉型の洗を鑑賞。洗を展示に出してくれた学芸員に感謝する。できれば、犀角を遠くにやってほしい。
犀角を解説するガイドが近くにきて話すので煩わしい。
田黄の山(田黄山子)をみる(3F)。幅20cm 高さ10cm 不定形、留青のように黄色の皮で文字が浮き彫りになっている。
乾隆由来の田黄類似黄寿山を30点含む石印セット「[王睿][王畿]仙藻」(42種)をみる(印章展示の奥 3F)。乾隆田黄九璽はやはり2璽が白っぽく田黄ではなさそうだ。
汝官窯展(1F) では、汝窯でカ窯系に近いものと南宋官窯に近いものと両方あるように思った。
London DavidFoundationの所蔵品とそくりのがあるとみていたら、Davidから3点借りてきていたのだ。
大阪市立東洋陶磁美術館から高麗青磁を借りてきて参考に並べているのも一興ではある。
河南省での出土品は、汝官窯の伝世品とくらべて著しく劣るものが多く、汝官窯の窯跡だとは信じられない。しいていえば、David Foundationの茶托に近い陶片は1つみつけることができた。
照明がよくない。やけに白っぽくみえる。大阪市立東洋陶磁美術館のような外光を鏡でとりいれるメカニズムを設置してほしい。最低でも太陽光スペクトルに近い光を出す蛍光灯やランプを設置して欲しい。
宋版展は、70年記念展のときのほうが良かったように思った。いくら宣伝があるとはいえ、宋版展の部屋に列ができるというのは、異常な風景である。むしろ、隣接する歴代書籍の展覧のほうが面白い。四庫全書簡明目録の原稿は巻子本4巻ですざましい小楷をみることができる。また、乾隆御筆の詩経冊があって、右に絵、左面に綺麗な枠のなかに本文であったが、絵は馬和之の様式を踏襲するもので、伝馬和之のいずれかの絵を模写したものだと思った。
多宝格などの展示予定の2室が未だ開いていなかった。
台北故宮博物院 大観展
2/7が前期、2/8から後期で展示替えなので、2/7は無茶苦茶に混んでいた。
故宮は、いつもガラガラで観ていたので、管理の人たちもまさかここまでという油断というか、慣れてないという感じがつくづく伺われた。
上海博物館のスタッフのほうが、制御には慣れているように思う。
末尾のA/ Bは 展示期間; A:前期 B:後期
- 梁 荊浩 匡廬圖 軸 185.8 × 106.8 A
元時代のコピーだと思うが、当時、原作と考えられていた古画を忠実に再現しようとしたものだと考えられる。サイズや構図、全体の構図、輪郭は北宋時代のものに違いない。ただ、山岳の皺については後世のものだろう。前景の極小さな双松も印象的である。
- 南唐 董元 溪岸圖 軸 221.3 × 109.7
そもそも構図そのものがおかしい。台北で展示させようとしたメトロポリタンの心臓の強さに呆れる。
- 南唐 巨然 層巖叢樹圖 軸 144.1 × 55.4 B
障屏画の一翼であろうし、比較的保存もよく、北宋時代の巨然様式をよく伝えているのではあるまいか?
- 宋 李唐 萬壑松風圖 軸 188.7 × 139.8 A
塗直しがひどすぎて原画が残っていないのでは?
- 宋 李唐 江山小景 卷 49.7 × 186.7 B
故宮70年展でみたとき意外によいと思ったが、今回みても良い、ただ、一部に太い黒い輪郭線であまり上手でない線がめだつ。薄れた線の描きおこしなのかコピーの証拠なのか疑問とするところである。絹の状態が悪かったため、アクリルを剥落とめにかなり使ったようにみえ、全体に表面がてかてかしている。
また、末尾の董其昌の跋が実に良い。程世きの跋まである。
- 宋 燕文貴 奇峰萬木 冊 24.5 × 26
ケーヒル氏が李唐にアトリビュートしている上品な作品
- 宋 李公麟 山莊圖 卷 28.9 × 364.6
古拙をねらったものなのか古代の様式を残しているものなのか疑問。
- 南唐 巨然 蕭翼賺蘭亭圖 軸 144.1 × 59.6
建物を描く 「界画」の部分は絹がかなり潰れ動いていて、あまりそれらしくない。かろうじて建物の赤い色がみえる。上部には補絹がありそうだ。
なぜ、こういう題がついたのかどうも良くわからない。
- 宋 宋人 景コ四圖 卷 33.1 × 252.6
後世のもの。
- 宋 燕文貴 溪山樓觀 軸 103.9 × 47.4
模写
- 唐 李思訓 江帆樓閣 軸 101.9 × 54.7
北京の遊春図巻と比べて著しく劣るとは思えない。
- 五代 五代人 秋林群鹿 軸 118.4 × 63.8 B
- 五代 五代人 丹楓?鹿圖 軸 118.5 × 64.6 A
画面 半ば右端に、枝の書き損じなのかそれともアラビア文字かソグドの文字なのか迷うような模様がある。
- 宋 黄居ァ 山鷓棘雀圖 軸 97 × 53.6 A
右にも左にも2cm以上の帯状の補絹がありまるで圭のように、原絹が残っている。絹が動いているのかやや粗い絹のようにみえる
- 宋 易元吉 猴圖 卷 31.9 × 57.2 B
子昴の跋は確かに良い。中国に残っていた日本サルの絵画として珍しい。
- 宋 崔白 雙喜圖 軸 193.7 × 103.4 A
問題ない傑作
- 宋 文同 墨竹 軸 131.6 × 105.4 B
どうも時代を決定しにくい。。同様の構図のものが大陸にもあり、いろいろ議論はあるようだが???
- 宋 宋人 梅竹聚禽圖 軸 258.4 × 108.4 B
ケーヒル氏が北宋画院の障屏画の唯一の生き残りとして賞賛していた。質が高く保存も良い。梅の花がかなりきっちりと輪郭をとる描きかたで、故宮にある馬りん の梅の小品のようなデリケートな描写ではない。また、これは自然の光景ではなく庭園の一部の描写のような感じがする。鳥には明らかに裏彩色がある。淡黄色の緻密な絹。中央の鳥の1羽は体が剥落してしまっている。
- 宋 徽宗 蝋梅山禽 軸 83.3 × 53.3 B
徽宗 の作品としては一番もっともらしい。彩色がほとんど落ちてしまっているようで、鳥の描写は墨描しか残っていないようでかなり簡略になってしまっている。
- 梁 關仝 秋山暖翠 軸 140.5 × 57.3
美術館のコメントにも原画があまり残っていないような、「巨石 と右上は後補」というコメントあり。
- 南唐 趙幹 江行初雪圖 卷 25.9 × 376.5 B
どうも好きにはなれないのだが、後半の細部をみると結構良いようにみえる。
- 宋 郭熙 早春圖 軸 158.3 × 108.1 A
北宋絵画の本質をかろうじて伝えてくれている傑作。欠損が中央にあるようにもみえる。
- 宋 宋人 溪山暮雪 軸 102.1 × 55.9
典型的な南宋絵画、下部の微細な描写がしっかりしている。上部に大きく欠失部分があるのが残念。
- 宋 范ェ 臨流獨坐圖 軸 156.1 × 106.3 A
今回、割と見直した。南宋以降なのは自明だが、意外に古いかもしれないし、范ェ原作の形も結構残していそうだ。左下端の妙なところに 「臨流獨坐」している士大夫を無理にいれている。このような模写態度は、南宋期に馬遠などの人物山水画が大流行した時代のものではなかろうか?
- 宋 宋人 小寒林圖 軸 42.2 × 49.2 B
欠損した穴は多いのだが、北宋寒林の面影を残す。たぶん巻の断片か?
- 梁 趙がん 八達春遊圖 軸 161.9 × 102 B
たいしたことはない。
- 宋 明皇幸蜀圖 軸 55.9 × 81
元の胡徳キの模本という古原宏伸さんの意見に賛成。
- 宋 喬仲常 後赤壁賦 卷 29.5 × 560.4
16世紀後半、居節などの時代の作品だと考えられる。
趙徳麟(令[田寺])の跋は,懐素自叙 の跋と書風が違いすぎるし、他の趙書とも違う。
- 梁 關仝 畫 關山行旅 軸 144.4 × 56.8
意外に良い。
- 宋 范ェ 谿山行旅圖 軸 155.3 × 74.4 A
マスターピース
- 宋 郭熙 樹色平遠 卷 35.5 × 103.2
メトロポリタン、クロフォード=コレクション。
絹の切れがめだち、切り貼りして作ったものではないかとさえ、感じられる。淡墨部分には宋画の雰囲気がある。濃墨の線は描き起こしたのではあるまいか?
- 宋 許道寧 漁父圖 卷 48.9 × 209.6
優れた作品で、見ていて気持ちがいい。ただ、おそらく16世紀末から17世紀に、非常に厳格忠実に古画を模写したものではあるまいか? 保存が良すぎるし、数カ所、絹の破れでもないのに理解不能な描写もある。やや黄色い絹。
- 宋 宋人 江帆山市 卷 28.6 × 44.1 B
南宋の雰囲気がある。この手のもので紙本というのは、珍しい。
- 宋 蘇軾 次辯才韻詩 冊 29 × 47.9
破れがあるが筋の正しいまともな作品
- 宋 黄庭堅 致景道十七使君尺牘 冊 27.8 × 47.4 27.6x38.3 27.7x28.7
水印の「山谷行人」印は信用できそうだ。伝世経路もよい。繊維のめだつ灰色の紙に濃墨。
- 宋 蘇軾 書前赤壁賦 卷 23.9 × 258 B
極めて謹直な作品。自跋は、王法が強く一段と説得力があり、手本には最高という気がする。
- 宋 蘇軾 寒食帖 卷 34.2 × 199.5 A
傑作。
- 宋 黄庭堅 自書松風閣詩 卷 32.8 × 219.2 A
問題ない標準作。
- 宋 黄庭堅 書寒山子?居士詩 卷 29.1 × 213.8 B
双こう本にはみえないが、1ランク落ちる。
- 宋 黄庭堅 書七言詩(花氣梵l) 冊 30.7 × 43.2
良品。南宋印の対面への写りがあるのがどうも気になる。
- 宋 米フツ 蜀素帖 卷 27.8 × 270.8 B
結構書き直しがある。米元章も、かなり墨ののりが悪く苦労したのではなかろうか?
- 宋 米フツ呉江舟中詩 卷 31.3 × 559.8
臨書
- 宋 薛紹彭 薛紹彭雜書 卷 26.1 × 303.5 B
良品。 第一紙は酢蓮のような白ぬき模様紙。なぜか、この前は常にガラガラ。
- 宋 徽宗 書牡丹詩 冊 34.8 × 53.3
保存抜群
- 宋 定武蘭亭真本 卷
定武蘭亭としては、唯一つ現在まで伝わっているもの。白紙。擦拓。やや淡い拓本。他には東京国立博物館に断片が3片残るのみで、東京の拓本は黄色い紙。
それ以外の定武蘭亭は全て復刻重刻といってよい。
- 宋 米フツ 書論書 冊 27.4 × 37
大阪にある草書4帖巻と、明時代には一緒だったが、離れた。
- 宋 蔡襄 尺牘(澄心堂帖) 冊 24.7 × 27.1
この乾隆印の滲みはなんなのだろう。。
- 宋 蔡襄 尺牘(陶生帖) 冊 29.8 × 50.8
爽快な名品。紙の立湧模様を再確認する。
- 宋 米フツ 紫金研帖 冊 28.2 × 39.7
良品、印刷では粗雑にみえるがなかなかどうして。。
- 宋 林逋 手札二帖 冊 31.4 × 35.4、31.5 × 38.2、
黄色っぽい、やや粗悪な紙。隠者だからだろうか?
- 宋 李建中 書諮(土母帖) 冊 31.2 × 44.4
標準作
- 宋 蔡襄 致杜君長官尺牘(離都帖) 冊 29.2 × 46.8
良質、末尾2行が、飛草と呼ばれるような軽快な書法によっているようだ。
- 宋 蘇軾 尺牘 (渡海帖) 軸 28.6 × 40.2
封筒部分もついている、海南島から離れるときの最晩年の重厚な書法。
- 宋 米フツ 致景文隰公尺牘(篋中帖) 冊 28.2 × 41.9
昔から有名なもの。
次の米フツ 尺牘巻は、いままであまり公開されなかったものである。この9点は清前半の王鴻緒によって
まとめられたもののようである。古い出版の故宮法書にも収録されていないので、もっとちゃんとみてメモしておくのだったと後悔している。
最近クローズアップされている同じく故宮所蔵の翰牘九帖巻より遙かに質が良いように見える。
清初の画家であった関思の所蔵印のある翰牘九帖巻は、実物をみるとかなり見劣りがする。
プリンストンや北京のものより、まず台北にある現物を調査すべきではないか。。
最初の五帖は全く紙質が同じで、濃墨なので墨線の重なりが目立たず模写本ではないかとみる人もいるかもしれないが、よく見ると
そうではなさそうである。晉紙帖の文言からするとこれが米フツが考えた晉紙に近いものかもしれない。
残りの4紙は最後の一点を除く3点は、全く問題がなく、真跡疑いないものである。
最後の一帖は、どうも書法が劣り、臨書ではないか?と思わせる。
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -1(來戲帖) 卷 25.5 × 43.6 竹紙濃墨
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -2(伯修帖) 卷 25.4 × 43.2 竹紙濃墨
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -3(晉紙帖) 卷 23.7 × 39.1 竹紙濃墨
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -4(王略帖) 卷 23.5 × 35.9 竹紙濃墨
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -5(賀鑄帖) 卷 23.5 × 36.8 竹紙濃墨
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -6(丹陽帖) 卷 23.5 × 22.8 宋紙
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -7(業鏡帖) 卷 25.3 × 21.6 宋紙 韓世能の印あり。伝世抜群。
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -8(惠柑帖) 卷 22.7 × 33.2 宋紙
- 宋 米フツ 尺牘 卷 -9(戲成帖) 卷 23.9 × 34.6 疑問作、臨写本か??