上海博物館開催 晋唐宋元国宝展 鑑賞記(2002/12/12)
→は鑑賞後に評価を訂正した履歴。
故宮博物院(22件)
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A 晉 王[王旬] 行草書 伯遠帖卷
紙本、巻子。
徐邦達の意見では: 真跡で 竹紙だそうだ。
確かに双勾本ではないが、唐模の遠官帖(台北)と似た、灰白の薄手の紙である。
唐の臨書ではなかろうか?
状態よし。墨色よし。
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S→B 隋 展子虔 遊春圖卷
絹。巻。もと張伯駒蔵、
宋代模という説あり。
宣和装 徽宗墨題
全体にややうすれたような1枚ベールがかかったような感じ。
一見して、正倉院の唐風の絵のような古風さが感じられぬ。
一遍上人絵巻や聖徳太子絵(東京国立博物館:法隆寺国宝館、11世紀)と同等ぐらい
の感じしかしない。
北宋の擬古作ではあるまいか??
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B→A 唐 杜牧 行書張好好詩卷
紙本、巻子 「満州から流出後、一度地下倉庫に隠されたため状態わるし」
と聞いていたが、意外に状態がいい。カビの斑点もみえない。よく洗ったのだろうか?
普通の唐人の書、入唐僧関係の文書と比較すると、やや堅くきびしい感じがする。
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D 唐 韓滉 五牛圖卷
紙本、巻子 20.8x139.8
日本、大原家に別本あり。
予想どおりのたいしたことのない絵。明時代以降。
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E→D 唐 閻立本 歩輦圖卷
絹、巻 篆書題記あり。
てっきり明末の偽作かとおもっっていたら、もう少し古い。
元明ぐらいには遡りそうだ。
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C→E 唐 顏真卿 行書 湖州帖卷
紙
臨写本。新しい。
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A→S 唐 模 蘭亭序 卷(張金界奴本)
紙本、巻子。八柱第一本、天暦本、ともいう。
西川寧の意見:双拘填墨
おもったよりも立派なもので感服した。紙は白い繊維が縦にところどころ輝く白紙で、
北宋から晩唐というところかもしれない。ひょっとしたら、蚕繭紙という伝承に似せたのかもしれない。
筆画は淡墨でぬったような感じで筆のあとの
感じはない。それでも立派なのは底本がよほど良いのだろう。筆線のところどころに濃
墨の点が散っているがこれが何なのかはわからない。
元の張金界奴以降、何度も表装されたあとが伺われる。前の表装を微妙に本紙のまわりに残して
再装しているので、歴史の重なりを感じる。
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S→C 五代 董源 瀟湘圖卷
明るい黄色い絹。 巻。
董其昌題は砕金青紙上に行草書やや小字、
董其昌跋は白紙上に草書大字、張大千旧蔵
明後期の模写本。
山のモコモコした描き方は他の2巻と共通で原本のある特色を残しているのだろう。
これがよくみえるのは図版の写真・印刷がまずいからである。
董其昌の董源 三巻がいずれも がっかりするものであったことは、
まったく残念である。
ただ、ここで重要なのは董其昌が本物とおもったのがこのようなものであったと
いうことである。董其昌のあの不気味な絵で、
「董源をまねした」といっているのは、ある程度、こういうできの悪い模写本の
不自然で奇妙な性格を董源の特色だと勘違いした結果ではないかと考えたくなる。
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S→A 五代 顧コウ中 韓煕載夜宴圖卷
絹 彩色 28.7x335.5 前に墨題記
南宋?
人物には形式化がめだつ。
夜具・衣装の錦模様、金泥銀泥の細かい模様がほとんど剥落しているらしい。
画中画は最後の屏風をのぞいてなかなかいい。
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A→C 五代 衛賢 高士圖軸
軸。宣和装、絹。
前後の宣和印が完備しているのかとおもったら、
前の宣和題とは1mm離れているので組み合わせをやった可能性がある。
様式として、五代の絵だとは信じ難い。
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A 五代 楊凝式 草書夏熱帖卷
紙。
濃墨、意外によく残っている。黒灰色に紙が劣化している。
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B 北宋 蔡襄 楷書自書詩 [持書帖] 白紙
乾隆の宮廷印が皆削り落とされている。
普通の作。
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C→B 北宋 崔白 寒雀圖卷
白絹, 淡彩 30x59.5。
元の皇妹図書印(?)
サインは信じ難い。古画。南宋ぐらいはいくかもしれない。やや枝が稚拙なのが気に
かかる 崔白なら枝にサインしそうなものだ。 雀の羽や胸の白い顔料が大部分剥落しており、かなり印象が変わっている可能性もある。
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B→D 北宋 李公麟 臨韋偃放牧圖卷
明るい黄絹 巻 彩色
魅力のない駄作。
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A 北宋 王[言先] 漁村小雪圖卷
白い絹。巻子。 水墨淡彩、青緑併用。金。
もとのラフスケッチのような絵の上に、だれかが大幅に濃墨の細い線で補筆したらしい
形跡がある。樹木と一部
の人物にそれが甚だしい。濃墨の線で描かれた
中央の松、末尾の蔦はそうとうあやしい。
一部に宋画らしい部分がある。中央のはりだした土は郭煕風でなかなかいいようだし、
巻頭下部の一部の樹や芦はなかなかいい。そこに隣接する漁夫と船も意外に古いかもしれない。
長方形に補絹・修理したらしいあともあるのだが、どこがどうなっているのか、
明快には指摘し難い。
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S 北宋 張擇端 清明上河圖卷
明るい黄絹。 巻。 1970年代に修理。 宋。
冒頭の鳥を金泥で描いた黄色の倣澄心堂紙は、列に並んだ都合から結構みた。畢氏の印が左下にあり。
金の張奢跋は、宋紙の良さ、まわりの印色、元好問 をおもわせる実直な書など非常にいい。
他の金人の跋、明の跋、呉寛跋、李東陽の珍しい小楷など、紙墨
ともに非常にいい。跋のほうがいいようにさえ感じられる。
絵では前半の樹木・土坡が特にいい。
水面の波線はかなりみにくい、レンズ拡大しても観察がむずかしい。
末尾は明らかに切断。
後半の橋の下にあるという意見もある魚(ref.戸田)は見いだせなかった。
たぶん宋画でいいのではなかろうか。
やむおえぬ事情で鑑賞時間が短く、画の精密な観察ができなかったのは残念だ。
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C→B 南宋 李嵩 骸髏幻戲圖頁
画冊の1、灰白絹。
グロな主題だが、線・色彩も上品。意外とまとも。
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D→B 南宋 李唐 採薇圖卷
明るい黄絹。 巻。 模写。
同じ絵が何点もあるのだが、バリアントのなかでは良いほうだ。。
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C 南宋 夏圭 雪堂客話圖頁
印象なし。
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B 元 黄公望 天池石壁圖軸
明るい黄絹。 墨画淡彩。軸。 139.4x57.8cm 模写
忠実な模写には違いない。特にどうということもない。
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A→C 元 王蒙 葛稚川移居圖軸
白地、紙。 軸 彩色、
139x58cm
昔年与日章畫此図/己数年 今重観之、始題上、王叔明識
明中期の模写か? 樹木水流があまりに下手。
岩はまあよい。すぐ脇にある青卞隱居圖軸と同じ画家の作品だとだれがみるだろうか?
王蒙の様式は文徴明はじめとする呉派におおいにとりいれられているので、呉派の
画家の模写なら、時代も近く区別がむずかしくなるように思う。また清代初期の
王石谷もそうとう
学んでいる。おそらく呉派の模写・石谷一派の模写が、そうとう混じっているので
王蒙の鑑識はかなり難しいと思う。
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S 元 趙子昴 水村圖卷
紙本、巻子、墨画、24.9x120.5cm 題記, 49歳,別紙題記あり。後ろの自跋は別紙になっていて、紙も微妙に違うようなので、ここだけは模写跋とすりかえられている危険もある。
白紙、下部1cmぐらいはカビの黄色いシミが点在する。
今回、最も愛借して鑑賞できた作品である。
上は董源の影、瀟湘臥遊図卷を受け、下は富春山居図卷を開く、まさに歴史の
キーポイントを体現している。
冒頭の樹、葦は瀟湘臥遊図卷をおもわせる。
長い粗い渚は富春山居図卷そのもの。
董源風の柳は非常に不思議な描きかたで、筆ではなく綿で描いているような感じすら
する。董源のオリジナルにあったかもしれない奇妙な技法なのだろう。
人物、家屋や四方網は鵲華秋色図巻(台北)を思わせるところがある。右方中央の小さな点は雁の群れで南宋の伝統をひく。
総じてインチメートでminiatureな好ましい作品だが、じっとみているうちに果たし
てこのような「小品」のみに魅了されていていいのだろうかという疑いが湧いてくる。
帰国後、東京の書店で、ちょうど特売していたので、水村図が大きく載っている
故宮蔵画集4 元代部分 を購入する。
これは古い出版なので、写真はいまいちかもしれないが、わりとマジメだ。ただ、
黄子久「渓山雨意図巻」がなく、しょうもない軸が2つはいっているのが残念。
上海博物館(32件)
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C 晉 王羲之 行書上虞帖卷
褐色紙。 宋模?
魅力のない模写。紙の汚れも怪しい。
とるにたりない。
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S→A 晉 王獻之 鴨頭丸帖
影印ではぼやっとしているが、現物では明快で保存もいい。
絹巻。 楷書題記の部分は紙も良く南宋の跋であることを
首肯せしめるものがある。
楷書題記の余清斎法帖との差(大令と右軍)は、法帖にしたとき変えたのか?
原本では自然な書、訂正あとはない。
かなりよい。迫力もある。写真では粗い絹かと思っていたが、実物は他の絵や書と比べて粗いとは思えなかった。灰色部分と黄色部分の絹があるが、もし灰色部分
だけがオリジナルな絹だとしたら、そうとう補筆が多いことになる。
2行の當の上部などほとんど補筆ということになる。2行末の剥落は古い原本の剥落
のようで模写時には既になかったもののようにみえる。
前後の絹はほぼ同類のものを使っている。
王世貞跋。
米フツ臨という説もあるが、唐人臨というのがもっともらしい。杜牧書に似たところもある。
よくいわれる萬暦帝が愛好したという形跡はどこにもない。
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D 唐 高閑 草書千字文卷
紙本、巻子
見るに足らず
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A 唐 懷素 草書苦筍帖卷
絹、大阪にて、既鑑賞。標準作。
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A→D 唐 孫位 高逸圖卷
黄絹 巻 彩色
明時代末期の擬古作か?
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S→C 五代 董源 夏山圖卷
明るい黄絹。 巻。 墨?
虚斎旧蔵。
顔料がおちてしまっているという意見があるが、信じ難い。
なかなか頭のいい、うまく整理された模写本。
細部はどうしようもない粗雑なところがある、例えば橋の上の楼閣のところ。
全体としては破綻がなく上手におもしろくまとめている。
明時代中期の制作だろうか?
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S→?? 五代 徐煕 雪竹圖軸
灰白絹。 軸。 水墨。 松煙墨。
これはかなり苦しい。竹は写真のネガをみるような超写実で清末の朱夢盧かとさえみたくなるぐらい中国離れしている。岩はヌメヌメしたかんじでなまこみたいだ。
とにかく時代を設定できない。理解不能。。
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B 北宋 郭煕 幽谷圖軸
白絹。 水墨。 軸
早春図(台北)と比べると模写本なのは明かだが、なかなかすっきりとしたいやみの
ない模写で原本の良さをよく伝えている。
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B 北宋 黄庭堅 小子相帖
NC、記憶なし。
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E 北宋 米元章 多景樓詩冊
白紙 濃墨。 冊。
グロテスクに過ぎる。あくどい。
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B 北宋 司馬光 寧州帖
歴史資料。
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A 北宋 蘇軾 行書答謝民師帖卷
白紙
意外と良い。
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B 北宋 王安石 行書楞嚴經旨要卷
歴史資料。
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C→B 北宋 王[言先] 煙江疊嶂圖卷
明るい黄絹。 巻。
東京国立博物館でみたときより、ずっとよく見えた。
中央の空白部分に微細な船が2つある。
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D 北宋 趙佶 柳鴉蘆雁圖卷
白絹。巻子。
かなりひどいもの。鳥の墨は良質の油煙か?。そのことだけでも宋とは信じ難い。
右手の枝は荒っぽい筆。
後半は清中期の画院の絵にしかみえない。
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D→C 南宋 李迪 雪樹寒禽圖軸
李迪とは信じがたい。普通の花鳥図。明時代か。
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E 南宋 梁楷 八高僧圖卷
黄絹 、巻
東京国立博物館ですでにみたが、どうしようもないもの。
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E 南宋 馬麟 郊原曳杖圖頁
新しい。
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A→S 南宋 趙構 二体養生論卷
これは意外にすばらしい。
真草二体で一行づつ書いた手本で、徽宗文集序につぐできである。
黄色い光沢のある紙、
みごとな墨ともにすばらしく、皇帝の作品とは信じがたいぐらいである。
なんとこれは2000年に嘉徳ででたもので、上海博物館が購入したものだそうだ。
なかなか嘉徳も馬鹿にできない。
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A 元 高克恭 春山欲雨圖軸
絹・軸、大阪でみた。標準的なもの。
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B 元 倪雲林 漁莊秋霽圖軸
白紙・軸、東京国立博物館ですでに鑑賞。
まえよりいい感じがした。ひどいものをみたせいだろうか?
風邪のせいだろうか?
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A 元 錢選 浮玉山居圖卷
白紙 巻 大阪で鑑賞すみ。
本紙だけは古い。たぶん真本か忠実なコピー。かなり後ろの跋から浮いている。
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C 元 任仁發 秋水鳧鷺圖軸
できがいまいち。
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C 元 唐棣 松陰聚飲圖軸
明るい黄絹。
普通作。
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A→S 元 王蒙 青卞隱居圖軸
灰白紙 軸、
東京国立博物館でみた。
やはり傑作の部類にいれるべき。
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B 元 王冕 墨梅圖軸
灰白紙、軸、
普通。
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A 元 王淵 竹石集禽圖軸
白紙、軸、
東京国立博物館でみた。
やや冷たい感じの絵だが良質。
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B〜A 元 呉鎮 漁父圖卷
白紙、淡い青墨。草書題も同じ墨を使っている。
筆墨が柔らかく、バリアントの多いこの絵のなかでは一番いいかもしれない。
オリジナルかどうかは確信できなかった。
このやわらかい感じは図版ではほとんど消えてしまう。
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B 元 鮮於樞 行書韓愈送李願歸盤谷序卷
普通作。
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B 元 楊維テイ 草書七?詩軸
普通。元人の軸物という点でだけ珍しい。
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B 元 趙子昴 行書秋興賦卷
普通作。
やや黄色い紙。
これは遼寧にもあったはずだがと、思っていたら、
遼寧のは秋声賦卷であった。ほとんど同じ様式。
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A 元 趙子昴 洞庭東山圖軸
安岐 旧蔵 大きな画冊からのわかれ。
標準作。なかなかいい。画冊を軸にかえたもの。
軸に変えたのは近年ではなかろうか?
清朝の印のおしかたは画冊用のやりかたである。
おそらく1開き分董其昌の対題もふくめて切りばりして軸装したのだろう。
青緑がめだつ。右上の青緑の遠山も美しい。
上の趙題はオリジナルだが、かなり絵に割り込んでいる。趙松雪は題を絵に割り込ませるのを問題とは考えていないようだ。
遼寧省博物館
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B 晉 曹娥誄辭卷
暗い緑絹。 巻。
北斉の書という説あり
影印と同じ印象。題記も含めて模写。
左下の符丁のようなマークまで模写されている。
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A 唐 歐陽詢 仲尼夢奠帖卷
灰色紙 青っぽい墨、そう傷んでいない。 巻。
オリジナルとは信じ難い。臨写本ではなかろうか?.
双こう本ではない。
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S 唐臨 孫過庭 草書千字文第五本卷
巻 晩唐の臨書
濃墨。細字草書。余清斎帖の千字文の祖先をみるような感じもする。迫力があるが、
そう好きな書ではない。懐素草書千字文(千金帖、台北)との類似がいわれるが信じがたい。
末尾題記は自由でいい。白紙だが、白い紙というよりは顔料を塗りこんで白くしたよ
うな感じがする。
冒頭と末尾の上下に「建業文房印」が合計4つある。やや暗い朱色。これは貴重かもしれない。台北の懐素自叙は宋臨だとおもうので、この印で一番信用がおけるものになるかもしれない。
王センの跋は青緑の紙上にあり。。
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A→S 唐 周ボウ 簪花仕女圖卷
明るい黄絹。保存良好。
これは意外と良いもので唐時代の座屏小屏風画の趣を濃厚にとどめている。
模写としても、相当忠実なもので一次模写であろう。南唐時代に、唐の原本から
再構成されたものかもという気もする。近年(1970s)修理時に,
これが5枚の絹に分かれていたということからも小屏風だった可能性は高い。一般には南宋模写という意見が多いが、
仮にそうであっても、なかなかいい模写だ。
それは、アスターナの唐美人図・薬師寺;吉祥天図との比較によってあきらかになる。
末尾の木蓮・石花などアスターナを思わせる。
唐画に多い指の肉のもりあがりは、末尾の女性にわずかにみうけられるのみ。
狗の描写にややいやらしい媚びた感じがあって、
アスターナの健康な狗とはかなりちがっているのが残念。
人気があり、なかなか観れなかった。
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S 唐 模 王羲之一門書翰 卷
紙本、巻子 26.2x 即天武后時代 萬歳通天進帖
白紙、ただし、劣化と火事の影響で黄っぽくなっているところが多く、一見
硬黄紙にみえる。
なんども洗ったせいか墨がそうとう薄くなっている。松煙墨。
1帖一紙づつ切れている。ただし、それ以外の切断線もある。
模写技術は、台北の奉橘と前後するぐらいか?それより少し落ちる。
喪乱・孔侍中(正倉院流出?)よりずっと劣る。
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S→B 五代 董源 夏景山口待渡圖卷
絹巻、色、50x320cm 天暦之宝」冒頭
末尾 耿氏の印
やや灰色がかった絹。3巻の中で最も古い感じがする。
絹・描写が違うので3巻が1巻の別々の部分の切断であるということはありえない。
ただ、原本が同じで別々の部分を模写したという可能性はある。
また、夏景山口待渡圖卷がもっと長いものであって、他の2巻がそこから模写されたという可能性もある。
董其昌の楷書題と後ろの紙は日本の鳥の子のような同じ紙。
おそらく董其昌は空白になっていた古紙に書いたのだろう。
「おそらく中央山部に補修あり、」とおもっていたが誤り。
これは元明の模写だろうと思う。
部分的に、不統一がめだつ。
想像するに、原本が部分的に損壊しているのを無理に補ったせいだろうか。
部分的にはそうとう
原本の性格を伝えていそうである。前半の芦の描写はかなり良い。しかし
そのバラバラ感と技術的な未熟から、かなり印象が悪い。
とくに後半は樹木・柳がガサガサしていて刺々しく柔らかさがない。
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S→B 北宋 李成 茂林遠岫圖卷
黄絹巻 墨画 北宋向氏旧蔵
宋画なのかもしれないが、下手。
深遠な感じがあまりない。
遠くからボーと観ていると結構すごそうだが、近くに寄ると
人物、家屋、水流が下手。木はいかにも宋っぽい。
山岳や土坡の描写には他の作品にはないオリジナルなところがある。
これが李成風なのだろうか?
正直いってがっかりした。
萬暦44年ごろの張丑「清河書画舫」で、原画が切りとられて他の絵が入れ替わったと指摘しているが、その意見が
正しそうだ。
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B 北宋 歐陽修 自書詩文稿卷
台北の集古録跋尾のほうがいい。歴史文書。
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S 北宋 趙佶 瑞鶴圖卷
これは事前のリストになかったが、おもったよりずっといいものだった。鶴の柔らかい
感じが、
贅沢な豪華な墨と微妙な筆でよくあらわされている。この感じは印刷複製ではまったく
消えてしまう。売店にあった複製もまったく駄目だった。
左の書は絵と同じ絹の上にある。
淡黄の絹(白絹が劣化したか?)にかいているのだが、ボストンの「五色オウム」の題のような塗ったような感じがなく、自然で
徽宗書としてすなおに鑑賞できる。 少し失敗した点画もあるがかえって自然だ。
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B 南宋 文天祥 木鶏集序卷
意外とまとも。 白紙。松煙墨。
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A 南宋 徐禹功 雪中梅竹圖卷
絹巻 墨 29.6x122cm
款 左端下竹節中にあり
「慧弁正葵」「呉門袁武卿氏家蔵」「其永保」
乾隆期題多。
元 呉カンの梅竹図、元 呉鎮 梅と合装
呉鎮の可愛らしい梅花とよい草書がもっともよかった。
本幅はつまらない。
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B 南宋 趙大亨 薇亭小憩圖頁
凡作。
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A 南宋 趙構 書馬和之畫 唐風圖卷
絹巻、29x827cm
ボストン本と同じくらいのでき。藤井有鄰館本のほうがいい。
紙とまちがえそうなくらい細かい白絹。
最近アクリルで修理したのか、テラテラ光るのが問題。
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C 南宋 朱光普 江亭?眺圖頁
凡作
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B 金 楊微 二駿圖卷
灰色白絹 設色 24.8x 80.0cm
古画ではあるが、特にどうということもない。小品。
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D 元 李カン 竹石圖軸
李の竹は、遼寧に数点あるが、
できの悪い大きいほうがきていた。
常設部分のみどころ
絵画では、
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呉彬「山陰道上図巻」がすばらしい。少し冒頭が傷んでいるようだが、巻子では傑作。不自然で幻想的な色の使い方に
魅力がある。
- 董其昌(そういやこの人上海人だ)「棲霞寺図 軸」は標準作。
- 崔子忠「伏生授経図」は面白い作品。
- 朱徳潤「渾輪図」は、まあまあいいのでは。
- 唐寅の落霞孤[務+鳥]図軸 絹本大作。もなかなかよさそうだ。柳を多く描く夏景だとおもうが、新鮮である。書もいい。「南京解元」はともかく「挑禅居士」印はおもしろい。
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費丹旭の仕女は水墨だけの名作。ずいぶん大きいと思った。
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閔貞の酔八仙図は巨大な水墨画だが、意外にいいのではなかろうか?
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張渥の九歌図巻は、そう悪くないが、クリーブランド本のほうがいいと思う。
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孫龍の画冊は、まあ良いが、紙が褐色すぎて興をそぐ。台北の画冊のほうが質がよかったように思う。
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沈石田の倣大痴山水図は、もう何度もみているがおもしろさがまったくわからない。
- 弘仁の画冊はまったくつまらないもので、真作とはおもえなかった。
- 鄭板橋の蘭の図巻は駄作。
- 呉昌碩のつまらない絵がかかっていたのには驚いた。
- 徐渭の花卉図巻は真作ではないだろう。書がうまくないし、紙も新しく印も変。
- 倪雲林「六君子図」は模写だときいてはいたが、これほどひどいとは思わなかった。
- 文徴明「石湖 図巻」は、惜しいことに、すでに大阪でみたものとかんちがいして真剣にみなかった。これは結構よいものだったらしい。不覚。
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古玉では新石器時代の豪華な玉の数々がいいが、戦国以降は、いいものが少なく、怪しいものもめについたのが、残念である。
- 印章展示の近代名人の印は優れた、他の美術館にはない展示である。
- 青銅器では末尾の解説がよかった。雲南から、瘤牛の貯貝器、山西から虎形の器をレンタルしているのには、驚く。
- 書はあまりよくない。
- 陶磁器展示が貧弱にみえたのは、残念だった。旧博物館のほうが陶磁器展示方法は良かったような気がする。
- 金銅仏では、MOAと東京国立博物館の1体づつある菩薩像とそっくりな菩薩を含む、阿弥陀三尊アルターピースを鑑賞できた。。