エーデルヘーレ祭壇画
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プラド美術館 十字架降架 
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エーデルヘーレ祭壇画 外翼グリザイユ
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ステーテル美術館 グリザイユ ロベール=カンパン
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エルミタージュ美術館  ロベール=カンパン?
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ルーヴァンのシント=ピーテル聖堂にあるこの祭壇画は、ロヒール=ファンデア=ワイデンの確実な傑作:プラド美術館所蔵の「十字架降架」の原型を伝える古いコピー、まだ絵がルーヴァンにあったころに製作された極めて早期のコピーとしてだけ有名であるが、実際にはもっと複雑な問題がある。
祭壇画の基本データは、次のとおり、
1443の年紀が入っている。
油彩。基底材はオーク板, 100 x 105 cm (中央), 105 x 53 cm (両翼)
Sint-Pieterskerk, Leuven
まず、エーデルヘーレ祭壇画は大きさがプラドの十字架降架よりずっと小さいので、直接の模写ではないだろう。更に問題なのは、
あの大きなプラドの十字架降架が、このエーデルヘーレ家のカペラに入るだろうか?ということだ。全く無理である。プラドの作品は、もともと、この聖堂とは別のノートルダム聖堂(現在は存在しない)用だったらしい。
プラドの十字架降架はルーヴァンの射手組合の寄贈であるが、エーデルヘーレ祭壇画は、もともとルーヴァンの名家であるヤコブとマリアのエーデルヘーレ一家のための作品なので、一家を描いた両翼内部はロヒールの原型とはかなり違っているだろう。
両翼の裏はグリザイユになっている。ひどく剥落してはいるが、なんとか図様を読み取ることができる。右は、聖母をささえる聖ヨハネ、左は、キリストをささえる父なる神と下に二人の天使という図象である。後者は、フランクフルト・ステーテル美術館の「フレマールの画家」(現在では学者は、トルネ在住の画家ロベール=カンパンと推定している人が多い)とされる絵画に、天使を除きよく似ている。石に刻まれた銘文まで同じである。また、エルミタージュ美術館にある「三位一体」は、彩色画であるが、更にこのグリザイユに似ている。これもロベール=カンパンに最近は帰属されているようだ。この現象が発生するためのもっともらしい理由は3つ考えられる。
エーデルヘーレ祭壇画やフランクフルト、エルミタージュにある、父がイエスを抱きかかえる形の三位一体図像は、彫刻をトロンプルイユに
したような感じがあるが、意外に例が少ない。ずっと時代が降ったエルグレコの聖三位一体があるくらいである。他は大抵は、十字架にかかったイエスを後ろで「父」が支える形だ。例えばアルブレヒト=デューラーの「聖三位一体の礼拝」(ランダウアー祭壇画、ウィーンKunsthistriche),マサッチオ「聖三位一体」などである。