2005年マドリード・イタリア旅行記録

イメージをクリックすれば、大きなイメージが出ることもあります。

2005. 5/9

10:00デンタルクリニックで、調子の悪い歯を無理やりみてもらう。 初日から多難である。。 10:40 SKYLINERに乗ってOK ALITALIAの受付で荷物のこととリコンファーム先を聞く。

アリタリアの食事は和食「鰻重」をとったら、まあよかった。ところが、12時間もその後のサービスがない。シンガポールエアラインなどの過剰なくらいのサービスになれているせいか、意外に思った。17時ごろに出てきたのが朝食としてもどうかと思う不味い軽食。空腹でなかったらまず手を着けないだろう。

ミラノ、マルペンサの両替所を利用したところ、とてもレートが悪かった。成田で換えたほうが良かったかもしれない。ただ、マルペンサに来た時点では選択支があまりない。マドリードは深夜着なので論外、そのタクシー代のユーロすらないのだ。 マルペンサは香港新空港よりずっと設備が悪く、どうかっと思う。到着したとき、昔の台北の空港かと思った。コンビニもドラッグストアもないし、あちこち工事中である。アリタリアがhub空港にしようとしているとすると相当な投資が必要かと思う。ただ、帰国のときみたところ、トランシットのところが最悪で外の出発ゲート設備はそれほどでもなかったようだ。
バルの利用のしかたをここで覚えた。ここのバルは列ができるだけのことはあり、健全経営のようだ。グラスビール(Karlsburg)とミネラルヲータ(500ml)で3.2E

 ミラノーマドリード間はほぼ定刻出発、定刻より少し早くつく。ミラノとマドリードには時差がないようだ。アリタリアの機内食は食べられないほどではない。ちょっと気がついたのだが、アリタリアのスチュワードは皆背が高い。イタリア人には背が低い人も多いのだから背が高い人を選んでいるようだ。そしてサービス精神は豊かなようだ。組織としてのルール作りとなると突然不得手になるような気がする。 マドリードではタクシー乗り場はあいていてすぐ乗れた、ところが事故か工事によるものらしい渋滞にひっかり、大周りしてもらった。サラゴッサとかバレンシアとか高速の道路標識にでるので、運ちゃんが悪だったらと少し心配した。まあ一応正規のタクシーであることは確かめてあるのだが、、30e.

AGUMAR HOTEL は思ったよりも良いホテルで、ダブルのシングルユース。インターネット30m/5eもある。 ミニバーがかなり安いと思う。 風呂もよかったが、シャワーのだし方がわからない。バス後、洗濯を試みる。乾燥がいまいち。


5/10, Madrid

ホテルの朝食を12eでいやというほど食べてからプラドへいく。途中、道がわからなくなり、スマートなおばさんにきく。

ボスの作品
図版は ボスの世界(英語) 参照。

が問題ない。

 特に修復完了後の「快楽の園」のクオリティは素晴らしく、コクシーの模写とは全く違う。花や果物、海、植物、の生々しい質感がコピーでは失われている。また、遠景の建物は魚の内蔵や蟹の甲羅でできているようで、そのプリプリした感じがすごい。ボスは肉より魚に興味があったのではないか? 左翼の象はリアルなアフリカ象であり、実物に近いものをみていたように思う。また、左下の樹にまきついた草は立体的で非常に美しい。
総じて図版では平面的なタピストリーのようにみえがちだが、決してそうではない。また、水中を通してみる肉体という描写がある。中央画面左下の池の部分では頻繁に描かれている。つまり、水の下にあるが、水を通してみえる部分を描写することにより、立体感をもたせている。透明、半透明の描写はボスはよほど好きだったようで再三でてくるし、他の作品でも使っている。右翼の「地獄」の遠景は破損が多いが、まさにジェノサイトの描写で戦慄的である。下部にはむしろ笑いを意図したところもあるようだが、樹男の足の包帯など実に生々しい。外側のグリザイユはなぜか左半分のほうが良く雲の不安な感じがよいし、水からでたような地上の奇妙な植物もいい。保存状態の問題だろか?右はちょっとぼやっとしている。前に人が多いときはこの左のグリザイユをみていた。
「三賢王の礼拝」 祭壇画は、思っていたよりずっと小さかった。「快楽の園」の巨大さと比べると、やや遜色があるが精妙な作品。特に羊飼いの描写がいい。一番下にいるやや粗野な表情の羊飼いから、屋根の上で聖母子を眺めている上品な表情の羊飼いまで、ある変化をたどることができ、なにか人間の発展_教化のプロセスを示しているようにみえる。従来、古い記録と守護聖人名から、寄進者は Peter Bronchorst とAgnes Bosschuysenとされてきた。ところが、最近の紋章研究によると、この2つの紋章は、全く2家の紋章と合っていない。(Marianne Renson, Genealogical Information Concerning the Bronchorst Bosschuysen Triptych, 2001, Rotterdam)。内部の紋章について後入れの可能性を精細にみてみたが、捨てきれないとはいえ、かなり自然で、もともとのものであった可能性も高い。そうすると、 Peter ??????さんと、アルクマールのAgnes de Sonneveltさんというのが、現在はもっともらしい推定らしい。百合の紋章をこの地域で使っているのはSonnevelt家だけらしいから。ただ、ボスは国際的に注文を受けていたので他国人である可能性もあるから、一該にはいえない。 外のグリザイユは、扉を開けると示現したキリストのイメージが縦に両断されるようになっており、いくら中央に描くべきといってもいいのかよ?と思った。また、彩色された2名の黒服の人物は後の所有者が加筆させたものと考えられる。
「男の断片」(右)は小さいものだが、クオリティが高く、「キリストの凌辱」「ピラトの審判」などのキリストを囲む悪役の一人ではないかと思う。
もとはテーブルの上に描かれていた「7つの大罪」は古拙な感じが強い。悪くはないが、感動するというものではない。今は板絵として展示してある。
「干草の車」は、樹輪年代(1498以降)も示唆しているようにレプリカだろう。外側の放浪者もロッテルダムのボイマンス美術館所蔵のほうがはるかにいい。


ブリューヘルの「死の勝利」は、アントワープの「グリート」(マイヤー ファンデルベルヒ美術館)より一回り小さいように感じたが、帰国してから調べたら1cmぐらい大きい。質はかなり劣る。描きかけていて仕上げをしないで放置したような感じがする。主題のせいとは思えない。画家の早い死と関係があるのかもしれない。あるいは、ひどく状態が悪く洗い過ぎたのか?ただ、1774年にSan Ildefonso宮殿の目録に記載されており、1827年にプラドにはいったものであるから、ひどい扱いを受けたとは考えにくい。おそらくもとからこの状態だったのだろう。
「死の勝利」「天使の墜落」(1562年,Muse Royaux, Brussel)「狂女グリート」(Musee Mayer van der Bergh, Antwerpen)を、サイズが同一なこと、テーマが類似することを根拠に、同じ時期、同じ注文者の作品だと推定している著者(Hagen夫妻)もいるが、同意し難い。画風がかなり違うからである。サイズは1567年の月暦画も同サイズであり、当時のブリューゲルのパトロン達にとって、便利なサイズだったのだろうから、根拠にならない。「狂女グリート」は、年号がほとんど消えているが、1562という拡大鏡による読み取り(Marijnissen and Seidel) もあるが、もう少し前のような画風である。1560-61ぐらいか? 「死の勝利」は、未完成と思われること、マニエリスム風の人物が混じること、から推察すると、1565以降ではなかろうか? サインがないことから、ブリューゲルの作品ではないと考えたこともあるが、 1614年アントワープでのPhilippe van Varkenisseの遺産目録にある'Triomphe van der Doot, van Breugel'がこの作品にあたるらしいこと、前述のように1774年からスペイン王室で伝承されたことから考えて、やはりBreugelの作品だろうと思い直した。

ウイーンのアルベルティーナからのデューラー展の中にプラドの「アダムとイブ」も展示されていた。デューラーの作品のなかでも一番良いほうではないだろうか。理想と現実のバランスがとれていて、特にイブは美しい。 デューラーのヌードの多くはごつくて少しも美しくない。これは全くの例外で、ゲント祭壇画のアダムとイブにならぶ北方のヌードの傑作である。アダムは、左手というより左半身にかなり問題があるようで、かなりいじられている可能性が高い。木の葉の描写もそうとう迫真。
フレマールの画家: ウェルル祭壇画 は、右翼の上半から右下にかけて、暖炉、や壁が全く塗り直されており、大きく画趣を損ねている。左翼は比較的良いようだが、それでも補筆はありそうだ。
Jan van Eyk派の「生命の泉」は明らかに後世のコピー。
パテニールも4点あったが、「カロンの舟」が抜群に良かった。マッシスとの合作「聖アントニウスの誘惑」が次。
Adriaen ISENBRANT, (b. ca. 1490, Bruges, d. 1551, Bruges) 「本をもつマグダレーナ」も可愛い作品。
フラ アンジェリコの「受胎告知」はあまりに装飾的すぎ、古画特有の劣化があまりに少ないので、 かなり手をいれすぎなのか?と疑ってしまう。
リュイーニのかなり大きな 「聖家族」があった。
パルミジャニーノ 「聖バルバラ」 とされる小さなバラ色の横顔の絵(ー>)はなかなか美しかった。
プラドの1Fにはラファエロとされる大きな絵がかなりあるのだが、どれも感心しない。もう一世代後の作品のようだ。 小さな聖母子 は良いけれどそれほどの作ではない。この良い聖母子はすごく豪華な額がついている。

昼食はプラドの中のセルフサービスカフェ、

2005.5.10 午後Thyssen-Bornemisza ( http://www.museothyssen.org/Ingles/index.htm# )

とにかく膨大なコレクションで、肖像画がやたらと多く、13世紀から二〇世紀までをカバーしている。もう19世紀以降はかんべんという感じですっとばした。
 まずメムリンク肖像画特別展だが、思ったより点数が少なかった。特にメトロポリタンのポルティナリ夫妻の肖像がなかったのにはがっかりした。それでも、ティッセンの、裏にアイリスの静物画のある男の肖像、 Uffizi所蔵の肖像画は良い。
ブリュージュからは、旧知のニーメンハイス両翼祭壇画と, いわゆる 「シヴィラ」女性肖像が来ていた。メムリング美術館がかなり寂しくなっているように感じた。 Brussel, Antwerpenからも2001年に鑑賞した小さな肖像画が来ていた。
英国王室コレクションの肖像画 http://www.wga.hu/html/m/memling/2middle1/12portra.html もあった。ラベルをみて変におもったが、エリザベス女王ではなくイザベルII と書いてあったことだ。 そうかスペイン語ではイザベルなんだ。
なぜかこの特別展のコーナーは無料で入れる。
有料の常設では、
ミラノ、ドウモ広場前rinesant百貨店のエスカレータがTYSSEN製だった。日本の三菱というところだろうか?
夕食はホテルのレストランにしたが、結構良かった。


5/11, Madrid

午前、午後2回行く。 開館直後「快楽の園」を18分独占して観る。  傑作という印象は変わらない。修理がよく、欠損補填がほとんどめだたない。 黄緑と黄色のデリケートな色調が特に素晴らしい。   大画面をすみずみまで一貫して描き尽くすこの作品は、比較的若いころ、30代ぐらいの作品だと思う。老年作らしい枯れたところが全くない。
 ロッテルダムの2001年の特別展でみたミハエル コクシーの模写は、人物が人形みたいでプラドのものとは全く違う。人物以外も平面的でタピストリーのようだ。一方プラドのは、建物、植物、動物とも立体的で、透明度、光の反射、光沢、影がいたるところに伺われる。例えば、前景カップルを入れたムール貝の殻の質感は実に素晴らしいし、前景右の円筒形の構築物に微妙な蔦がからまっているところも美しい。左翼の生命の樹?に絡まるアイヴィーも立体的だ。画家の気力体力が充溢してないと無理であろう。 左翼のイヴはなんどみても奇妙な姿勢であり、軽く浮いないと、こういう姿勢はできない。しかし、あまり不自然にみえないところが立派である。 損傷は上部の端がひどいようで、右翼上部は特に大きな損傷があり、よくわからない部分もある。

ロヒール ファンデアワイデンの「十字架降架」は巨大で迫力がある。等身大に近い人物がならんでいる。左端のマグダラのマリアの顔はごついけれど、その衣装・金属のベルトの描写は比類なくすごい。 聖母の左手はやせ細ったようなのに、右手はむしろ丸い感じがする。これは、その横のヨハネの裸足と調和させているのか?総じて聖母の描写はかなり人工的な感じで、そのまわりのマルタやマリアのほうが自然。 アリマタヤのヨゼフのサンダルのはきかたはちょと変、最上部のセム顔の男(処刑管理人?)の白い上着には「暗花」のような模様がある。宝石・金属や衣服の質感はゲントの祭壇画に近いものすごいもので、後年のロヒールの作品よりむしろ優れている。

ロヒールの「ニッチの聖母子」は、思っていたよりは大きく、とても美しい、幼子イエスが本をくしゃくしゃにしているところがとくにいい。天使が持つ王冠の金属光沢がとてもリアル。 背景の黒は明らかに塗りつぶし。
メムリングの三王礼拝は、ロヒールの模倣作といわれて評判が悪いが、非常に保存が良く美しい。特に左翼は、それだけで十分鑑賞に耐える。また、この額は極めて豪華で斑岩の柱までついている。
ディエルク=ブーツの三王礼拝は、良いのかもしれないが、ちょっと重苦しい。ロヒールのミラフローレス祭壇画のような、アーチ状の枠を使っている。
2階ルーヴェンス室のわきにクララ=ペーテルス http://www.wga.hu/bio/p/peeters/biograph.html の優れた静物画が2点あった。 1611年の作品 はEuroWebにあったので、リンク、 もう1点は私が撮った 部分写真(右)
スペインのロイヤルコレクション由来のもの。アントワープのニシンにならぶ傑作、彼女は花よりも器物が巧いようだ。特に金属杯の精妙な刻文の描写は秀逸である。また、銀のスプーンの柄の質感もすばらしい。
ヤンブリューゲルは風景画が良く、「花輪つき聖母子」は、かぼちゃの描写が他よりは良かったが、まあまあ。セーヘルスについては、やはり西洋美術館やアントワープの2点ほど精妙な作品は展示されていなかった。やけに大きな作品だった。

ルーベンスでは、大きな標準的な絵画が、これでもかというぐらいあふれているが、アントワープ大聖堂の2作(フランダースの犬ででてくる)のような感動は感じられない。
スルバランの静物画では、透明ユウ陶器の描写はいいが焼き締め器の描写はいまいち。羊は良い。
サンチェス コタンの静物画2点(no.7612, no. 2002)では、セロリの描写は素晴らしいし、ひねたニンジンなど野菜の描写もいいが、それ以外はそれほどでもない。 SANCHEZ COTAN, Juan(b. 1561, Orgaz, d. 1627, Granada)の他の絵の例
レンブラントには 「ミネルヴァ」に似た作品 が良かった。特に左側の侍女がいい。 ただ、これはアルテミシアという主題らしい。モデルは同じ人だからなあ。。
16世紀スペイン絵画は、同時代のフランドル絵画のマッシスとかゴッサルート、クレーヴなどとよく似ていて、あまり特徴がない。
3Fにメレンデス(MELENDEZ, Luis (b. 1716, Napoli, d. 1780, Madrid))の 「テーブルの上の梨」の絵(右)がある。なかなか静謐で良い。ところが、同時に飾ってある他のメンデスはうるさくて感心しなかった。
エルグレコは、その昔、東京でみたグレコ展の印象とそう変わらない。演出された神秘という感じがあって本物の怖さがあまり感じられない。
ムリーリョは大きい作品のほうがよく愛くるしくおだやかで好感がもてる。「パレルモの聖ロザリアがいる聖母子」があっさりしていて良かった。半円形のリュネット形の作品でずいぶん大きなものがあったが、これもあっさりしている。「聖母被昇天」はエルミタージュのほうが良いかもしれない。 ティッセンとプラドにほとんど同じだがサイズが違う受胎告知があるのには呆れた
ベラスケスもそう感心しなかった。宮廷のコビトを描いた作品は優れた肖像画だと思う。
ゴヤについてはあまり高い評価はできない。特に宗教画はよくない。平穏な風俗画や自画像には良い印象もある。


5/11, Madrid 15:00

プラドの近く、またはその中で財布をすられる。 繁華街での銀行キャッシング直後であったのでつけられていた可能性が高い。 まったく気がつかないほどの神業。 カード二枚と数百e損失。 カード停止とマスター再発行を電話で依頼。傷害はなにもなかったこと、ウィークデイだったこと、万一のためカード番号と連絡先をメモしていたことが迅速な対処を可能にしたこは、不幸中の幸いである。  緊急カードはフィレンチェのホテル受け取りで手配してもらった。セゾンマスターのほうが、手数料も安く、対応者も優秀な中川さんという方にあたったのでセゾンだけにした。


5/11, Madrid, 夜。

muse del jamonのこと。
Madridの食事で一番印象的だったのが、このハムの店である。ホテルのレストランも悪くはなかったが、ここは強烈だった。デリカテッセンにテーブルがついて食事もできるという店だったが、ハムの専門店であって、店中の壁に一面ハムがつるしてある。カウンタは英語が通じないが、とにかく指さしてたのむ。  はじめは堅いパンのサンドをたのんだが、ハムがおいしいので、ここでは破格に高いJAMON IBERICO 薄切り盛りを頼む。普通品のハモンセラーノが3eぐらいなのに12eもする。 しかし、これはめちゃめちゃおいしかった。量もすごくて大皿に一面に盛ってありこれだけでお腹いっぱいになる。高級ハモンをいやというほどたべるのはこれが最初で最後だろう。
その日の夕食にも、ちょっといってみたが、盗難のあとなので今度は普通ハムのメロンそえにした。4eぐらいだったか?20cmぐらいの大きなメロンが2切れ、ハムがたくさん。ハムはとても食べきれないので、少し持ち帰って今、たべている。
MUSEOS del Jamon, 6店あるようだ。いったのは、プラドの向かいの通りをずっと左へいったところ   PASEO del PRADO,44, tel 914202414 だろうと思う。
ハモンは熟成させてつくるセミドライのハムである。