2005年ベルギー旅行記録

2005/7/29  GENT Brugge

Antwerpをつつがなく出て、歩いて駅まで行く。この道、さらにブルッヘまでの道は経験すみなので気楽である。駅で、ゲントで途中下車を主張して切符を買う。一つ心配なのはゲントで荷物預かり/コインロッカーがロンドンテロ以降にも営業しているだろうか?ということだ。  ゲントでは、人がやってる荷物預かりに預ける、たぶん:安いうえに、ロッカーの操作が難しかったりするので、こちらのほうが安全である。  マルクトまで路面電車でつつがなくいき、シントバーフへ直行。

ゲント市立美術館が改装中なので、古い宗教美術は、シントバーブに展示してあると聞いたのでどこかとおもったら、なんとクリプトに展示してあった。これはただで入れるようだ。  暗めの証明だが、ボスの「十字架を担うキリスト」「聖ヒエロニムス」を十分鑑賞できた。プラドと比べてもそう劣らない傑作だと思う。また、地下の奥には、昔 ゲントのヨースにアトリビュートされていたカルバリオがある。これも相当質の良い作品だと思う。今はHugo van der Goesだという説が強いようだ。  神秘の子羊」の展示環境は変わっていないが、オフシーズンのせいかあまり客がいなくて良かった。ただ、監視員席に人がいないので、フラッシュを焚く人がいて、さすがに我慢できずに注意した。  やはり、神の水晶の錫丈、聖歌隊の豪華、聖母のはにかんだような表情がよい。なんかヒューベルト風の作風のほうが四年前より好きになっているようだ。
 売店で折り畳みの祭壇画を買う。あまり良い印刷ではないが意外と買わないものだし、ここでしか売っていないアイテムには違いない。また、ちょうどかけていたCDが良かったのでつい買ってしまった。

よく考えたら昼ご飯なしで、ぶっ続けなのだが、結構もつものではある。 一見、繁華街らしいところがあったので、キャッシングできるところを探したなんとかみつかったが時間がかかった。いつも迷うのが駅に帰るトラムだ。今回も迷ったが、車掌に教わってなんとかなった。どうしてか逆の方向のトラムに乗ってしまいそうになる。ガイドブックにも行くトラムは書いていても戻るトラムは書いていない。

 ブリュージュまでは、二十分前後、またまたけちくさく歩いてde Castillonのむかいまでいく。今回は天気にめぐまれてよかった。案の定、シエナのLa Casatoや、 FirenzeのSorrigio Antica Toreと同じ、鍵を貸す形のホテルだ。レセプションと朝食は、Castillonを兼用、いろんな意味でお徳用だが、内装はやや安っぽいのはしょうがない。Castillonはかなり女性向けの趣味なので、ちょっといたたまれないような感じすらあるので、私には丁度いい。 ただ、窓は古い窓でなかなか良いのだが、密閉性がないので、内側にガラス板の窓・扉があってネジでとめる形式なのは少し驚く。このネジでとめるのは、Castillonでもやったような気がする。
三時なので、聖母教会へ参り、ミケランジェロをみる。この彫刻、フィレンチェにあるものより良いのではないかと思うくらい出来がいい。古典性が強く抑制がきいている。料金を払って内陣を見学。今回は15ユーロで5つの美術館がみれるという超お徳用切符を買う。ブリュージュの美術館の入場料は意外と高いのでバカにできないのだ。内陣は4年前と比べかなり良く整備されていて、手にふれそうなとこにあって危険を感じたイセンブラットはやや高いところにかけてあった。発掘によってみつかった石棺?に描かれた壁画が多く展示されていた。内陣のオルレイの磔刑図は近くでみやすくなっていたが、少し騒々しくムキムキすぎるように思った。
 Charles Temeraireの墓は比較的新しいがいかにも武人の墓、Marie Burgogneの墓は、下部の紋章をささえる人物が美しい。

 教会をでて、夕方までなので、20年以上いっていないGruutehuseMuseumにいってみる。ここは屋敷そのものをみせるところで、前は楽器を展示してあった。絵画などではなく工芸美術中心なのでつい後回しになってしまう。今回は丁寧に最上階まで上ってみたが、外からはさして大きいともみえないのに何部屋あるかわからないような屋敷である。ちょうどタペストリーの展示をやっていて、ますます雰囲気がある。  他の人が書いていたが、どうゆう構造だか見当がつかなかったものが、一つ氷解した。3Fだったの家族用礼拝堂のいきどまりが窓になっていて、なんと聖母教会の内陣が下にみえるのだ。つまり、この礼拝堂は聖母教会のなかに侵入したつくりになっていて、しかも内陣を見おろしている。いくらなんでもこれは、ちょっと特等席すぎるような感じだ。 また、別の部屋にはベランダがあって、そこから見おろすブリュージュの町はブリューゲルやアイクが描く町並みそっくりで驚く。鐘楼だと実は高すぎて、今ひとつ違う。金羊毛騎士団員・ブリュージュ1の貴族の館らしく、意外に満足度が高い美術館である。 夜は推薦のKardinalHOFここは確かに良いレストランだ。安いメニュー(30)+ワイン(15e)

2005/7/30 Brugge

朝は、だらだらするとともに、7/31の会場であるSt. Gillsまでいってみることにする。意外とわかりにくく 難渋する。St. Gillsの近くは運河がきれいである。 11:30にコンセルトヘボウの小ホールで Haydon Corps Christi, piano Jan Michels を聞く、Misica Anticaに分類されていたが、実はバルトークその他の現代曲を混合し、即興を交えたかなり実験的なピアニスト版で面白かったがちょっと期待とは違った。

午後は グロニンヘン美術館にまずいく。前とは入り口が違い、かなり改装されているようだ。 特別展のせいでもないだろうが、かなり展示スペースやレイアウトが変わっていてびっくりした。どうもまえより落ち着きがなくなってような感じがする。Dierk de Vosが退任して館長が変わったせいだろうか? メムリングの特別展をメインにしてるせいだろうか? どちらかというと、前来たときの落ち着きのある美術館のほうがよかったように思う。 メムリンク肖像画特別展はマドリードのティッセンよりも展示数が多く興味深かったが、特に、珍しいめったにみられない傑作があるわけではないのがつらいとこだ。ダンチッヒの祭壇画でも借りられれば素晴らしいのだろうが。  ファンデルパーレの聖母を観ていたとき、聖ゲオルギウスの顔と聖母の間、柱頭装飾のあたりに落書きか引っかきキズを消したような跡をみつけた。これでは大きなガラスを前にはめるのも無理はないが、ガラスの質がいまいちで、高透過性、低反射性が満足できない。つまりライトがうつったりするのだ。ライティングのせいもあるかもしれない。他でも同様にガラス板やガラスケースに不満を感じたし、イタリアでもひどい目にあったから、ベルギーとイタリアでは、少なくとも改良の余地が多いにあるように思う。
 グースの「聖母の死」は、基底材はやはり横むきに板を並べてあり、いたを止めた鋲の上に下地をつけて描いてあるようだ。キリストの周りの青色のセラフィムのような集合した天使の顔は今回気がついた。(後日、St. Salvator美術館でこれの古い模写をみた。こちらは縦に板を使ってある。)
ベンソンのマグダレーナは確かにmaster of femel half-length といわれる作品グループに似ているが少し硬質で厳しい。 特別展と貸し出しのせいか17世紀以降の作品が少ないのが残念である。
ここで、Restaureur Ou Fausseuurという本を買う。フランス語のカタログだったが、あまり面白くてホテルで読みふけってしまった。
次にメームリンク美術館にいく。前回訪ねたときは、工事中箇所が多かったが、今回は普通、驚いたのが解説ラベルがほとんどなく、すべて音声ガイドに頼っていることだ。番号しかついていない。いつものことで音声ガイドを断っていたので、入って驚いた。よく知らないものは、タイトルさえわからない。それでもざっとみてから、おめあてのマリアヨハネ祭壇画にむかう。一番奥で幸いなことに裸で展示されていた。  再会、といってもいいがやはり文句なく美しい。照明の違いもあるかもしれないが、今回は外翼の肖像も楽しめた。特に緑の衣の聖アグネスが良い。影が美しく、左から光線がきてることを前提に厳格に描いてある。聖母の衣が黒くなっているのは、やはり藍の劣化だろうと思う。後日ルーヴァンのエーデルヘーレ祭壇画で同様の例をみた。
夜は、またKardinalshofに行く。二回来たということで、なんとマダムがでてきて歓迎してくれる。ジュネーヴ出身だそうだ。大変すばらしい。値段にふさわしいC/Pが良い高級店である。

2005/7/31 Brugge

午前十時にマルクトへいって、 Obrecht Walksに参加そようとしたら、予約でいっぱいということで断られる。まあいいかと、 ブリュージュのヤコブ聖堂に聖ルチア伝の画家の基準作らしい横長の作品をみにいった。どうみても、ブリュッセルの同じ画家の作品よりはるかに優れている。ただ、ガラスが2重になっていて、しかも中のガラスはかなり汚れており、上のガラスは反射率が高い。照明が悪くないのでまあいけるのだが、惜しいことだと思う。
ここで、なぜか素晴らしいポリフォニーの練習が聞こえてきた。カウンターテナーまで聞こえるのでこれはプロだと思って、そっと除きにいったら、やっぱりプロの練習だった。もうけと思って聞いていることにしたら、担当らしい人がいろいろ教えてくれる。Capella Praensisというグループらしい。うまいものだ。そのうち10分ぐらいのミニコンサートがあるということなので、待っているとなんと、さっきのObrecht Walksのグループがどさどさ入ってきた。歩くだけで予約がいるのはおかしいと思ったがこういうことか? まあ、ついでに聞いてみることにする。キリエObrecht MissaeDominatus? だった。聖血の画家の作品があるのが、練習場になるところだったので、観察しながら冗談をいったりした。絵葉書を買おうとしたが、担当がこない。Walksの別のグループがきて、また演奏を聞いた。椅子が不足していて、年輩の女性で立ちになりそうな人がいた。脇に立ってたので、ついでに椅子をそっと調達してみた。すると他の人が赤い布張りの豪華な椅子を2脚ももってきてくれたのでかえって得してしまった。その前後に練習を聞いたりしたが、このグループは、練習のほうが遙かにうまい。特に11時ごろに聞いた練習のGloriaはすばらしかった。本番では堅くてのりが悪いように思えた。 寺の人(男性)には絵葉書や写真を買ったら、いろいろおまけしてもらった。

夜は、コンサートなので豪華な食事は避けて、パイと ビールにした。Ducchess de Brregogneというビールの古酒を飲んでみたがあまりに酸味が強く300ml全部飲めず手荒いに流してしまった。
午後、 Sint Jans のメムリンク美術館でマリアヨハネ祭壇画を昨日に続いて再度観る。なぜか他の繪と違って、幸いガラスなしで裸でみれるのはありがたい。アントワープには悪いがやはり抜群の傑作だと思う。この完璧な古典美というものは、鑑賞者が経験を積み、年とってから、だんだんと理解できるようになってくるものだと思う。若いころは、もっと表現主義的なもの、怪奇なもの、珍しい表現をもとめたものだ。醜さのなかに美をもとめる逆説的な努力に耽ったりした。平凡で古典的な図象ながら抜群のクオリティという作品にひきつけられるにはキャリア不足だった。それでも二十五年前メムリンクに引きつけられたことは幸いだった。  再度、観察すると、
・聖母の黒い服は周囲と違って光沢が全くない。顔料自体が違うようだ。また、微妙な凸凹があるようにみえる。これは、ルーヴァンのエーデルハイデ祭壇画の聖母の「もと青だったらしい衣装」にも共通する。おそらく、青色顔料の劣化のせいではあるまい か?
・同じ模様の豪華な織物が聖母の背景、オルガンをひく天使の衣装、カテリナのスカートに使用されている。 また、赤い織物が左と中央画面で共通 このように織物が共通していることは意外と多いものかもしれない。
St. Gillis でのCappella Flamencaのオブレヒト コンサートは、意外に印象に残っていない。下手ではないのだが。。

2005/8/1  Brugge

だいたい、そう問題も盗難も事件もなく、楽に旅行できそうでなによりだ。 しいて危機といえば、飛行機のなかで喉を痛めてしまい、薬局で買ったトローチやアスピリンでは効果が薄く、結局、アントワープのホテルのむかいにあるお医者さんにかかってしまったことだ。  私の場合、確かVISA のSELECTで支払いできると思う。 8/1朝は、まずシントヒーリスSint Gillsへいってメムリンクの墓に詣でることにする花束でも買おうかと思ったがこの町は花は多く咲いているのに意外と花屋がない。まあいいかと、教会までいくが、どこが墓なのかまったくわからない。丁度、堂の中にいた関係者らしい初老の男性に聞いてみたところ、度重なる改装と破壊で墓は消えてしまっているということのようだ。  がっかりしたが、アントワープの聖JACOBに大きな墓亜をもつルーベンスはなんて幸運だと思った。 

そのあと聖血教会へいく。きわめて古風な建物だった。日曜で、神父さんが豪華な服装をして、聖血のシリンダーをもち信者にさわらせるという儀式をしていて、列ができていた。中世以来の聖遺物崇拝のなごりに身震いしたが、さすがに信者でないものが近づくのははばかられ遠慮した。地下の展示室になぜかおめあての画はなく。ちょっとあてはずれだった。

  ブリュージュでは比較的グルメである。ここで不思議なのは、観光地のせいか、かまえないで自然に贅沢できるようになっていることだ。ホテルに推薦されていった KARDINALSHOF(枢機郷の家)というレストランもいたって贅沢で自然に食事できる。また、安いところも高いところもそれなりにホスピタリティがよく、失望することがない。  昼食は控えめで、
DINNER 1. KARDINALSHOF Service Dinner with Wine
DINNER2. KARDINALSHOF 4 course dinner with Wine
DINNER3 Brasserie MANES
LUNCH De Witte RAAF with Puis fusse

Antwerpen のENNGELも良いところもあるが、塩が効きすぎ。 Antwerp, LA RUCCOLAは問題ないスタイリッシュなレストランだが、肉の焼きかたがいまいち感心しなかった。 KARDINALSHOFはその点問題なく良い。 四日目のランチもKARDINALSHOFにしたほうがよかったのかもしれないが、マルクト近くで目をつけていたホテル兼業の店にした。ホテル兼業だと宿泊こみのセットがあってけっこう楽だからだ。悪くはないが、安い分少し劣るような気がする。

本日はルーヴァンへの移動日なので郵便局へいって本を日本へ送る。50euroといささか高かった。もどって Sint-Salvator Catedralの展示館で鑑賞。Sint-Salvator のフランドル絵画で最古の部類にはいるとされる横長の絵画は、本当にJan van Eykより古いのだろうか? 黒い縦長の点がある白い裏地の着物、これはたぶん白テンのガウンか? これに似た服は、フーケの聖母子(アントワープ )、聖ルチア(Bruuge, St. Jacob)が着ている。  どうも、技術的に未熟なだけで、実際は14世紀〜15世紀ぐらいの作品にみえる。また、古い本に掲載されていた伝Hubert van Eykの金地がめだつ絵画もみることができた。キリストの身体が伝van Eyk作品やトリノ時祷書のそれに近くて、細身なのが、hubertを連想させるところなのだろうが、実際はどうか?下部マリアやヨハネの顔をみと、 Hubertではないだろう。写本の一部分を大きくしたような古風な様式ではあるが、むしろ、マサイスなどと同時代の擬古的な作品ではあるまいか? http://www.wga.hu/html/m/master/zunk_fl/15_paint/1/04calvar.html old flemish calvary http://www.wga.hu/html/m/master/zunk_fl/15_paint/1/09cross.html Hubert?? http://www.wga.hu/html/b/bouts/dirk_e/altar/torture.html St. hyppolite
聖盃のまわりにザクロ無花果葡萄などの果物をあしらった cornelius Heamの大きな絵画があるがニスが汚くなっていてまったくといっていいほどみることが困難である。かろうじて観察すると結構良い作品のようだから、クリーニングを期待する。
日本の寺と同様に、美術館にあずけていた美術品をとりもどして宝物館を作り、人を呼ぶ傾向がでてきたようだ。前グロニングでみた聖ヒッポリトスの殉教もここにもどってきていた。Toison D'OR展目録にでていた、皇帝シャルルの肖像があった。顎がとがっている。
その後、この聖堂内でやっていたオルガンの即興演奏がすばらしく、つい時間をとってしまった。15時ごろルーヴァン行きに乗る。