2003/11/1,2  正倉院展, 関西旅行

2003/11/1  正倉院 展

なんとか午前中入っても、かなり混んでいる。何十年と継続する人気 には驚く。

正倉院展文書で,空罫をはっきり折っているものが多く びっくりした。 続集別集 造石山寺文書は、日本の美濃紙のような白い粗い紙だが、折り目の空罫が全面にあり文書の文字は折り目の間に書いている。罫はすべて表面に凸で等間隔(1cm程度)。 具注暦 にも空罫がありこの罫はかなり狭い、5mmぐらい。。 写経に裏が再利用されたものは、伸ばすせいかめだたなくなっている。八世紀では、空罫は普通に行われた技術であったとしか思えない。書譜の空罫について日本で、正倉院文書を例示した議論がないのは不思議である。どうやら、西川寧さんが「からけい談義」で言及したことはあるらしい。 正集の文書、続々集の絵などは皆薄いピンクの精緻な紙である。書道博物館でみたアスターナ出土文書にこの手の紙があり、本当に唐か疑ったものだが、どうやら間違いないようだ。

絵紙は30枚1巻+29枚1巻あるうち、  二枚だけでていた。かなり厚手の大きな紙で裏は薄茶、表面は薄紅、 茶をまぜたような紅染料で飛白を描いてある。麒麟を描いた紙は雲気 動物とも実に素晴らしく、謝かくの気韻生動 とはこのことかと思うくらいであった。台北でみた馬王堆一号墓 木棺漆絵以来の暢達した飛白である。ところがもう1つの絵紙はいいかげんで、燕の飛白など一部いいところもあるが、かなりぞんざいなものである。中国美術の製品でこのようなばらつきは考えにくいので、少なくとも絵は日本製なのだろう。

桑木の碁盤
 これは中倉 に二個あるはずだが、そのうちの一個である。 側面の精緻な木画、盤面のモザイクには感心した。木画なら沈香の箱もあったのだが、この盤にくらべれば粗雑である。この盤は、正倉院工芸ではそれほど精密で有名なものではないがそれでもそうなのである。0.3mmぐらいの銀線を使い、1mm以下の単位の精密な木画がほどこされ、そのなかに篆書の牛の字の模様が散りばめられている。この盤をじってみていると、日本でもなく、故宮でみることのできる宋以降の中国でもなく、漢以前でもないあるスタイルがみえてくるそれが 唐のスタイルなのだろう。
瑪瑙杯: こういうものは粗悪なカラーや精密でもモノクロ写真ではほとんど真相がわからない。結構いいものである。ただ、そもそも瑪瑙をくり貫いて杯にするという発想が西方的である。ビザンツでは多く制作され、ルネサンスイタリアでも作例があるようだが、中国では、西方の影響が深かった唐時代にわずかに例があるあだけである。玉器の器はあるが、瑪瑙は少ない。漆器、磁器や銀器に比べて実用性に乏しいわりには、費用・時間がかかりすぎるということもあるだろう。どうせやるなら玉器が好みだったということもある。
最も豪華だったのはほとんど全面に鼈甲を貼った竹を模した杖である。特に鼈甲製の蔓が上から下まで杖にからみついているのが最も奇。竹の節ごとに小さな芽のようなものもつくってある。解説では石突きの象牙細工を細かく解説していたがそうたいしたものではない。
螺鈿鏡の地のつめものは確かに雲南のものに近い。それより意外なのは螺鈿面以外の側面が単なる銅枠でまったく装飾がないことだった。
紅染象牙尺は思ったより大きく厚かった、3mm以上ある。かなり重いのではなかろうか この紅の染色は故宮の清代の象牙染色品とはかなり違う感じがする。より不透明な絵の具のような感じだ、

奈良国立博物館坂本コレクション11/1昼、

 坂本コレクションの中国古代青銅器を 正倉院展のついでにみたが、胸が悪くなった。量は多いのだが質がいろいろであきらかにおかしいものもある。わざわざウィングを改造して藤田美術館か正倉院ばりに内側を白木で張ったいい展覧室をつくったのはもったいないように感じた。この坂本さんの鑑識を考えると、昔から疑問に思っていた坂本さんが東京国立博物館に母上の名で寄贈した大きな青銅器2器も要チェックだろう。ただ、同時寄贈の春秋期の大鼎は問題のないもののようにみえる。
 そうはいっても、戦国の銅象嵌龍紋壷、背の高い容器、西周の大きな鼎あたりは良いようだし、多数の爵のなかには傑出したものが混じっているようにみえる。羅列的な展示法にもかなり問題があるように思う。1ダースぐらいセレクトしてみせたほうが良かったかもしれない。

白鶴美術館  11/1夕刻

  気分を新たにするためもあって、白鶴美術館の青銅器、金銀器展示をみにいく、奈良からはやはりそうとう遠い。御影からの急坂はタクシーに頼ってしまった。もう若くないということだろう。数年ぶりに観たが、やはり全く素晴らしい収集である。質的に揃っていて地方作や偽作、ひどい修理品がみあたらない。おそらく洛陽周辺など河南からの出土品を主としているのではなかろうか
錆や銅の質感が自然で3000年の年月を自ずから感じさせる。この展示でも全部でていたわけではなく、有名な鍍金壷や提梁容器はでていなかった。 注目すべきは、多くの蓋つきの容器の蓋をあけて中をみせていたことである。内部の銘文をみせるのが目的かもしれないが、うれしい展示だ。手のとどかないような底にある銘文も多く、松丸さんをはじめとして、銘文の鋳造方法に議論が多いのももっともだ。また、いったいこんな場所に鋳造した銘文をだれが読むのか どういう用途なのか疑問に思った。
2点の方彝の中身を細かくみたのはこれが初めてだ。壁の肉は意外薄く2mm以下でしかも均一であって外部の凹凸は反映していない。底の隅も直角でお玉も届かなかっただろうから酒が残っただろうと思う。この2点を基準にすると根津美術館の方彝はかなり怪しい。
鳥ユウの注ぎ口は喉のしたにあった。なぜ嘴にないのかとおもったが、後ろの蓋からこぼれるからだろうか??
象ユウ はかなり鉱物化が進んでいて陶磁器のような光沢である。
2Fでは、隋・初唐の打ち出し仏が初見でいいものをみたと思った。ウィンスロップ・細川・moaなどにも同類があるが、金も自然に残りなかなかいい。少し白っぽい感じがする。右端の菩薩の顔がつぶれているのが残念。銅厚1mmぐらいで、蓮台のところなど1cm近く隆起させている、法隆寺伝世の打ち出し青銅仏に比べて 圧倒的。
軍用車馬具(西周)があったが、中央研究院の辛村と比べても負けない銅質。装飾豊かな帯勾、金具などは、相変わらず素晴らしい。
世界一とされる唐金銀器もいい状態で鑑賞できた。
長沙 出土かと思わせる漆レン もあったが、あまりに腐敗剥落がひどく鑑賞できる状態ではない。
いわゆる海獣葡萄鏡では最高レベルのキャストと銅質のものが展示されていた。
銀貼り鏡について、側面も銀板?をまいているようにみえた。
武定年間の朱書題記のある白石(大理石か?)台座、彩色金箔あり、青州の低レベルの彩色金箔よりは良いように思える。

11・2  大阪市立東洋陶磁  寄贈品展

  なかなかいいコレクションだ。   南宋  脩内司 風の碗,  雍正官窯のトルコ石青とレモン黄の小杯、  唐の豪華な加彩灰陶馬, が、特に印象的、
漢?という緑褐陶磁の机はずいぶん珍しいと思う、
 平常展 高麗青磁では、男女の水滴はでていなかった、出張中なのかもしれないが、ときにはみてみたいものだ。
成化官窯の瓜紋ボウルはそう悪いものではないが、一流かどうか考えてしまう。成化の小皿は少し地が白すぎて清朝のようにみえる。考えすぎかもしれないが。
入江氏 の酒器の展示は少しげてっぽく、あまりここにあわないように感じた。今回は李氏のコーナーはパス。
 新寄贈(予定)品の未展示分で てもとにある唐 枕とそっくりのものがあったのでカタログを買うことにした。
ここの所蔵品cdromがあったが、win3.1win95対応というのにはコケた。古いから安いそうだが、これでは売れないだろう。早急のヴァージョンアップを期待したい。